夜のどこかで、ふと浮かんでくる食べものの話です。

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📻 第26夜


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📻 アビ蔵放送局

アビ蔵:夜になると、ふとあの匂いが蘇るんだよな。ほんのりバターが溶け出す、あの香り。

バステト:じっくり熟成させた生地の匂いだよね。焼き上がりのふわっとした湯気が、静かに空気を満たす。

アビ蔵:朝じゃなくて、やっぱり夜の冷たい空気にほのかに混ざる感じがいい。手に取ると、表面さくっとしてそうだけど、安心する。

バステト:さくっというより、かじるたびにしなやかさを思い出す。重ねられた層のひとつひとつが、少しずつ解けていくイメージ。

アビ蔵:じゅうっと窯の中で時間をかけて焼かれる音は、想像の中だけの静けさで。でも確かにそこにあって。

バステト:冷たい夜の中、翌朝のためにそっと置かれたままのそれを想像する。まだ知らない味わいを、押し込めたまま。

アビ蔵:あの香りがふわっと立ちのぼって、夜の静けさと溶け合う瞬間が、なんとも言えないんだよな。

バステト:ひとかじりで溶けて消えるのに、記憶にはずっと残っているような。夜だけが知っている、そんな食べ物。

アビ蔵:いつの間にか時間も薄れて、あのクロワッサンの断片だけがやわらかく漂っている感じがする。夜にだけ蘇る、そんな風景。

バステト:まあ、言葉にするほどではないんだろうな。ふわっと、そっと、そのまま流れていく。

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